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果てのない海に呑まれて
第46章 得れば失う、失えば得る
レオンだからこそ成し得たこと。
「ファルツ家は今まで多くの人間を闇に葬ってきた……その方法は様々ですが、この毒が最も人道的なんですよ」
「少しでも楽に子供を死なせようという父の配慮か」
レオンは口の端を歪めて笑った
「……フェリペ様がなぜ貴方をファルツから引き離そうとしたのか分かりますな」
ロンブローゾ氏は彼の正直過ぎる反応にそう呟いた
「……」
兄の最期の姿は、あまり覚えていなかった
狂った母と、悲しむ間もなく突然やって来た次期当主という権利。
己のことに精一杯の、無力な子供。
“それは今も変わらない……”
強く拳を握りながら、レオンは小さな声で問うた
「兄上は…兄上も楽に死ねたのだろうか……」
「それは分かりませぬ……検死をしたのは儂ですが、外傷はどこにも見当たりませなんだ。
ただ儂とてあの方の死は亡くなってから知ったのです」