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果てのない海に呑まれて
第46章 得れば失う、失えば得る
「……父によって殺されたのではないと……そうか」
レオンの顔に何処かしら安堵のようなものが浮かぶ
自分にとっての父は遠く、そして外からの圧力に耐えない弱い存在だった
だから自分は良い–––兄さえ手にかけていないのならば。
そして、ミゲルを死なせるようなことさえなければ–––。
「……ん」
ミゲルが僅かに動き、声を漏らす
それまでとは違い力の抜けた小さな声だった
「……!」
敢えて話に入るのを避けずっと横に座っていたリリアがいち早く気付き、様子を見る
「ぁ……」
うっすらと目を開けたミゲルが彼女を捉える
「……ラ…ま…」
「え……?」
しかしその目は直ぐに焦点をなくしミゲルは再び気を失った
「どうした?」
「大丈夫。今一瞬だけ目を開いたの」
レオンの堅い声を解〈ホグ〉すように柔らかく続ける