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果てのない海に呑まれて
第7章 ファルツ家の人々
馬鹿にしたような笑いは、レオンではなくその後ろに控えるミゲルに向けられた言葉のようだった
「私は卑しい人間なんかじゃ……」
「リリア」
怒って反論しかけたリリアをレオンが小さく首を振って遮る
「ジェーニオ」
レオンは弟に一歩詰め寄り一層冷たい声で彼の本名を呼んだ
「お前がどういう出自であれ、このファルツ家の跡取りであることに変わりはない。その自覚を持てと今回の出発前に言ったはずだが?」
「そこまで言われるなら兄上が継がれてはどうかと申し上げたはずですが」
ジェーニオは全く反省する様子を見せない
「父上もそれをお望みだ」
小さく笑ってそう呟くと
「では、僕はこれで」
来たときと変わらぬ笑みで頭を下げ、廊下の角に消えていった
「何よ、今の」
結局嫌みだけを言って去っていった弟に憤慨しながらリリアは去っていった方を睨む
「私の四つ下の弟なのだが、まだまだ子供なんだ。ったく……」
レオンもつい言葉が悪くなっている
"人のこと言える立場じゃないくせに……"
ジェーニオに嫌悪を覚えたからといって、レオンへの怒りが消えたわけではない