この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
果てのない海に呑まれて
第46章 得れば失う、失えば得る
「……リリア」
ロンブローゾ氏が去った後、レオンは看病するリリアに静かに呼び掛けた
「何?」
リリアもすかさず側に寄り、その真剣な眼差しに応える
「しばらくミゲルを頼めるか。私はルチアーノと話がある」
隣の部屋でな、と言うとリリアはただ頷いた
「何かあったらすぐに知らせろ」
「ええ、分かってる」
二人が出て行くと、リリアは一つ小さく息を吐いた
“また、逃れた……”
死の影から–––
ミゲルの側に座ると、少し色を取り戻した顔をジッと見つめる
そしてふと水瓶に手を入れると指先についた水滴を彼の乾いた唇に落とした
「……」
自分を背に庇った父と重なったミゲルの姿
もう護られるだけの自分ではいたくない
“私に何が出来る?”
考え込むリリアは、ミゲルがまたうっすらと目を開けたのに気付かなかった