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果てのない海に呑まれて
第46章 得れば失う、失えば得る
「……レオンは…?」
微かに聞こえたその声にハッとし振り返る
「ミゲル! 気が付いたのね!」
「レオンは……?」
再度同じ質問を繰り返すミゲル。
「隣の部屋にいるわ。ルチアーノと話してる」
「そう、か……」
主人の安全を確認しようやく安心したのか、ミゲルは大きく胸を上下させた
「俺はどのくらい眠っていた?」
「ほんの数時間よ……」
起き上がろうとするミゲルを支え、答えながら水を差し出す
「数時間…たった数時間か……」
長い夢を見ていた
二十年間の、長い夢。
「ミゲル、どこか痛むところはない? 何か……」
「いや、大丈夫だ。もう何ともない」
「……そう」
笑って返すミゲルから目を逸らしてリリアは俯向く
それは単に落ち着きない彼女の態度が可笑しかっただけなのだが、彼女の目にはそうと映らなかった
ミゲルは僅かに首を傾ぐ
「どうした? レオンがいなくて拗ねてるのか?」
「違うわよ!」
ただの冗談に本気で怒ってしまうのは、そうしないと涙が溢れてしまいそうだったから。