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果てのない海に呑まれて
第46章 得れば失う、失えば得る
少年の目の前に数枚の金貨が落とされる
男はそれを前に動けずにいる平民を嘲笑うように鼻を鳴らしてから、自分も仲間を追って馬を走らせた
「……」
夜明け前の静かな町に残された方は、遠ざかる男たちと道に落ちた金貨を侮蔑的に見やった
少し遅れて地面にしゃがみ込みそれを拾い集めると、何の躊躇もなく道端の乞食の前に置いて行く
「……っ」
そして何故か緊張が解けたような深いため息を一つ吐くと、眠る乞食が施しに気付く前に薄暗い道を駆け出して行った–––
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「……」
この邸に温もりを感じたのは、もう遠い昔のことだが。
煌びやかな装飾や石像たちはこんなにも冷たいものだったかと、今になって思う
“やはり帰るべき場所はここだと……そう思っていたということか”