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果てのない海に呑まれて
第46章 得れば失う、失えば得る
そうでなくなって初めて寂しさを覚えるレオンが向かうのは、弟の元。
自由気ままなあいつのせいで、不必要な枷が増えたと感じていた
本当にあいつを思って当主として押したことなどなかった
ただ憎らしいあの女の子供が、憎たらしく自分に刃向かってくるのが腹立たしかった
“兄上と私以上に…比べられて育ったからな……”
教育係も務めたカタリナは、邪魔な自分にも、そしてそれに劣る息子にも厳しく躾けを施した
啀み合うように作られた関係–––
「……」
“だが、今なら分かる”
ジェーニオの部屋の前に立ちゆっくりと呼吸を繰り返すレオン。
“あいつは自分の立場をよく分かっていた”
自分が母親に利用されていることも、
自分が当主になることでファルツ家がどうなるかということも、
そのために起きてしまった悲劇も–––
「もうこの世にたった二人の兄弟だ」