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果てのない海に呑まれて
第46章 得れば失う、失えば得る
和解しようなどとは言わない
「…ただ……」
「ただ最後にこうして顔を付き合わせて話そうと?
本当に……馬鹿な兄上だ」
扉を開けたジェーニオは、目の前に立つ兄に呆れてため息をついた
「……ご無事でなによりです」
毎度海から戻る度に言われたその言葉も、今度ばかりは本気らしかった
「知っていたのか」
「ええ。フェリペ兄上の時から全て」
自分がいる為に、母親が兄たちを殺すその事実を
ただ目の前で見ているしか出来ない己をどんなに嫌ったことだろうか
「私は今夜ここを去る」
「……懸命ですね。逃げられるうちに逃げた方が良い」
「まるで自分は逃げられないと言いたげだな」
「……」
「その通りだ」
冷たいその言葉に、ジェーニオは目も合わせずただグッと息を詰めた
「ファルツ家から離れることは赦さない。どんな場所でも、私の育った家族だ」