この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
果てのない海に呑まれて
第46章 得れば失う、失えば得る
それを思い知った
たとえ殺されかけても、戻ってきたかった場所–––
「お前が、守るんだ」
「……」
「ジェーニオ」
頑なに顔を背ける弟の頬を片手に挟み、無理やり自分の方を向かせる
「……っ」
今までにない強引な手だ
「誰でもない、お前自身の手で」
ファルツを壊さぬよう
わざと距離を置いていたお前には
私以上にこの家を愛する心があるだろう?
「……っ、分かりましたよ」
ジェーニオは不機嫌そうに兄の手を払う
「お前はファルツ家の一員だ。私が認める。
そして次期当主はお前だ。カタリナじゃあない。今すぐにとは言わん……だが……」
「分かりましたって!」
口うるさいとは思っていたが、これほどとは。
語尾を荒げてもなお何か言おうとする兄にジェーニオは冷ややかに告げる
「それなら次期当主として貴方に命令します。
直ちにこの家を出て行って下さい。誰にも見つからないように」