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果てのない海に呑まれて
第46章 得れば失う、失えば得る
「誰?」
暗がりから一歩近付いたレオンにシャルロットが鋭い声を飛ばした
「……フェリペ?」
“貴女の心の中に、兄は生きているというのに……”
うまく愛せなかった母を前に、レオンは少しの間沈黙していた
「母上……」
ようやく小さな声で母を呼ぶ
けじめというなら、この人もそうだ
兄が唯一生きるこの場処を、守らなければいけない
たとえ
「大切なお話が…あります……」
たとえ、自分が–––
「…レオンが……死にました」
この人の中から永遠に消え去ったとしても。
「……え?」
シャルロットの目が止まった
何を言っているか分からないといった様子だ
“……当然か”
この人の中で“レオン”は長年姿を見せない、自由気ままで親不孝な息子だった
「……そ…」
今さら感じるものもないだろう