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果てのない海に呑まれて
第7章 ファルツ家の人々
「今日からここがお前の部屋だ」
鍵を開け、ゆっくりとその扉を押し開いてゆく
「……!!」
目の前に現れた光景にリリアは目を見張った
「あいつが何故たくさんある空き部屋の中からここを選んだのか。その理由はこれだと思うぞ」
そこには大きな肖像画がかけられ、一人の少女がリリアに向かって微笑んでいた
豊かな金髪と、穏やかな青い瞳
もちろん顔立ちは違うが、雰囲気はどことなくリリアに似ていた
'妹への贈り物だったのだが、多分ちょうど良い大きさだろう'
リリアは今自分が着ている服を見る
「じゃあこれは……」
深紅のドレスに金髪がよく映える
くれた相手が相手だっただけに素直に喜ぶことは出来なかったが、気に入っているのは確かだった
我ながら似合うと思ってはいた
しかしそれも当然のことだったのだ
「フローラ様が亡くなってからもあいつは旅の土産を必ず持って帰っていた。生きていたら彼女は十三歳。それは十三の少女に贈るための服だったんだよ」
リリアは十五歳だったが、少し小柄な彼女にそのドレスはぴったりだった
「重ねられてるんだろう、彼女と」
妹と重ね合わせてーーーその相手を抱くだろうか?