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果てのない海に呑まれて
第48章 果てのない海に呑まれて
ウェッツェル家–––カタリナが本格的にファルツを乗っ取りに掛かったと、そんな話を耳にしたのがつい昨日。
レオンの命が狙われた
そんなものはただの噂であってくれ
その暗殺の結末までは知らぬクリスは、そう願うしかなかった
「船長、出航の準備が整いました」
「ああ……夜が明けたら出よう」
もう一度 空〈クウ〉に目を戻し、彼らの安否に思いを掛ける
思い出されるのは、あの日のミゲルの言葉–––
‘俺は奴が苦しむのを分かった上で追い詰めた。それが奴の為になるからだ。
クリス……ファルツに逆らえば生きてはいけないんだ’
’何だよ、大げさだな’
あの時はそうとしか思わなかった
黙り込むあいつの真意などオレに分かるはずもなく。
’ハァ……どちらにしろオレはここを去る。オレは人を傷つけるために船に乗ってるんじゃない’
レオンの側を離れた