この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
果てのない海に呑まれて
第48章 果てのない海に呑まれて
「振り返るな、行け!」
ミゲルに言われ再び足を動かす
全員が上がりきり小舟を回収すると、梯子を片そうとした部下をクリスが手で制した
「もう少し待て」
岸の方では敵のうち数人が此方に向かって泳ぎ始めていたが、今までの全てを海に捧げてきた男に追い付くはずもない
彼らが船に辿り着く前に、梯子がまた小さく軋んだ
「……っ…さすがに冷たいな、冬の海は」
「ああ。そこに飛び込む馬鹿なんてお前くらいだ」
濡れた手を掴み、重い体を活かして彼を引っ張り上げるクリス。
「レオン!」
そこにリリアが駆け寄り、自分が濡れるのも構わず抱きついた
「悪かったな、心配をかけた」
「……」
「…っ…リリア……苦しいぞ…」
何も言わず無言で力を込めるリリアの横に、今度はミゲルが立った
「拭け。というか脱げ。出航早々に風邪でもひかれたらたまらん」