この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
果てのない海に呑まれて
第49章 番外編 光と影
「お前、生まれは?」
「……さぁ」
この見た目と、今の舞で自分がジプシーであることくらいは明らかだろう
だからこれは愚問だった
「この辺りじゃないのか」
「そうかもしれないし、そうじゃないかもしれないねぇ」
聞いてどうする、と言わんばかりにミゲルの隣に腰掛け、流し目を送る
だがミゲルがそれで絆されることはなかった
「……ハァ。あんたみたいな客は初めてだよ。
娼婦の過去なんて聞いて一体どうしようって言うんだか」
ヘレーネは降参したように足を前に投げ出すと、後ろに手をついて遠くを見た
「…生まれた時から流れ者だったさ。季節と人と食べ物を追ってこのヴィーク海の周りを回ってた」
「アウスグライヒに来たことは?」
「あるよ。アウスグライヒの側の小さな町で、姉たちと一緒に踊ってた」
ミゲルが何も言わないので、その先を続ける
「この町に来て…あたしがバカだったんだよ。十四の生意気盛りに親に反抗して、仲間から離れてフラフラしてた」