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果てのない海に呑まれて
第49章 番外編 光と影



「お前、生まれは?」

「……さぁ」



この見た目と、今の舞で自分がジプシーであることくらいは明らかだろう

だからこれは愚問だった



「この辺りじゃないのか」

「そうかもしれないし、そうじゃないかもしれないねぇ」



聞いてどうする、と言わんばかりにミゲルの隣に腰掛け、流し目を送る

だがミゲルがそれで絆されることはなかった



「……ハァ。あんたみたいな客は初めてだよ。

娼婦の過去なんて聞いて一体どうしようって言うんだか」



ヘレーネは降参したように足を前に投げ出すと、後ろに手をついて遠くを見た



「…生まれた時から流れ者だったさ。季節と人と食べ物を追ってこのヴィーク海の周りを回ってた」

「アウスグライヒに来たことは?」

「あるよ。アウスグライヒの側の小さな町で、姉たちと一緒に踊ってた」



ミゲルが何も言わないので、その先を続ける



「この町に来て…あたしがバカだったんだよ。十四の生意気盛りに親に反抗して、仲間から離れてフラフラしてた」


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