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果てのない海に呑まれて
第49章 番外編 光と影
淡々と、その声には何の感情もない
喜びも–––
「知らない男たちに捕まって、気がついたら売られてたのさ。
逃げても一人じゃなんにも出来ない。結局ここで身売りするしかなかったってわけ」
–––哀しみも。
「……仲間は助けに来なかったのか」
「ジプシーは皆んな仲間想いさ。だから一人の為に仲間を危険に晒すような真似はしないんだよ」
その社会に干渉せず、ただ流れのままに。
それがジプシーの生き方。
「時にはリンゴの芯を食って繋ぐような生活だったけど……それでも楽しかった。あたしは踊りが好きだった」
だから踊り続ける
たとえそれが身売りのためでも構わない
この体は生まれてからずっと商売道具さ
「……んっ」
顎を掴まれ、顔が傾く
そのままもつれるようにベッドに二人は倒れた
「…何だ、やっとヤル気になったのかい?」
「……そうだな」