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果てのない海に呑まれて
第49章 番外編 光と影



ヘレーネも力を抜くミゲルの隣に寝そべった



「……」

「……」

「……良い匂いだな、お前」



不意にミゲルが顔をこちらに向けて言った



「え?……ああ、湯浴みしたばっかりだからかな」



髪を掬い取り、口付けるようにその香りを楽しむ



「……」



そしてそのまま何かに気付いたように動きを止めた



「……媚薬、入ってないだろうな?」

「鼻が効くね。その通りだよ」

「っ……!」



バッと身体を離すが、芯に集まり始めた熱はもう止められなかった



「貴様……」

「ここは娼館だよ? 香油に媚薬の効能が含まれてたって何にも不思議じゃないだろ」

「……」



当然のことを言われ、ミゲルは無防備だった自分に舌打ちする



「どうする? 観念してあたしと寝るかい?

それとも自分の欲望を無視して眠るかい?」

「……」



枕に顔を押し付け、思案するようにしばらく無言を貫く

その間にもヘレーネから漂ってくる香りは容赦なく彼の本能を刺激していた


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