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果てのない海に呑まれて
第8章 還らない者



「それで? この部屋が嫌だとはどういう意味だ?」

「……ここは亡くなった妹さんの部屋だって聞いたわ。そんな部屋じゃ眠れない」

「我が儘だな。怖いのか」



レオンは馬鹿にしたように笑う



「人が死んだくらいで部屋を壊して作り直すわけにはいかないだろう。ちなみに昨日までお前がいた船だって、大勢の人間が死んでいるぞ」

「……っ」



彼の少しからかうような言葉にも震えるリリア



「そ、そんなんじゃないけど……そ、そうだわ、あとね、勝手に私を貴方の妹と重ねないで」

「……?」



彼女の言っていることが分からなくてレオンは首を傾げた



「……まさか、ミゲルに何か言われたか?」

「ええ。妹に見立てた女性を貶めるなんて、貴方最低ね」



レオンは目を閉じ少し怒ったようにため息をつく



「またあいつは余計なことを……」



そしてリリアの体を後ろから抱くと耳元に口を寄せた



「言っておくが、この部屋に案内させたのは単に屋敷で一番広く豪華だから、それだけだ。

確かに最初は似ていると思った。だがあいつはお前ほど強気な女ではなかったぞ」

「っ……悪かったわね、女らしく従順じゃなくて」

「いや、そこが良い」



その言葉にリリアは一瞬動揺したが、すぐにからかわれているのだと思い直した


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