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果てのない海に呑まれて
第8章 還らない者
「あの……」
リリアは耐えられなくなって後ろを振り返った
レオンの真っ黒な瞳が見つめ返してくる
何を考えているのか全く分からない
「父親に会いたいか?」
「……!」
レオンの問い掛けに驚きつつ、リリアは深く頷いた
「どんな人だった?」
先ほどのリリアとまるっきり同じ質問を返してくる
「え、と……小さい頃からよく一緒に遊んでくれて…ちょっと厳しい所もあるけど、優しい人……」
言いながら視界が歪む
言葉に嗚咽が混じる
「どうやったら父親に会えると思う?」
リリアはえっ、と顔を上げた
「お父様は…ギスタール家の人間は皆死んでしまったって……」
「ああ、死んだ。もういない」
レオンの言うことの意図が分からず顔をしかめる
その上またはっきりと死を言い渡され、堪えきれずに涙が零れた
込み上げるものを呑み込むために喉が痛い
「会いたいと願えば会えるのか? 過去を振り返れば蘇るのか? こうして涙を流すお前の目に父の姿は映っているか?」
「……っ」
「無駄なことはしない。余計に辛くなるだけだ」