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果てのない海に呑まれて
第8章 還らない者
"なんて冷たい言葉だろう……"
彼の口にする言葉は胸に深く刺さる
それは悪意ではなく、真実だから。
他の人間ならきっと、また会えるとか、見守ってくれているとか気休めを言うのだろう
"でも、生きててくれなきゃ意味がないわ……!"
大切な人を喪った者だけが分かる苦しみ
レオンは今、誰よりもリリアの傍にいた
「本当によく泣くな、お前は」
「…っう……」
そう言われて泣き止めるものではない
レオンは小さく息を吐いて彼女の頬を伝う雫を拭おうと手を伸ばした
「…いや……」
触れた瞬間、リリアは顔を背けてベッドに埋まる
「見ないで……」
今は亡き人を想って泣くということは、この男の前ではしてはいけない気がした
そんな彼女の気持ちをレオンは鋭く察知する
そして伸ばした手を彼女の頭の後ろに回し、自分の胸に押し付けた
「これで見えない」
リリアは驚いて濡れた瞳を見開いたが、いつものような抵抗はみせなかった
広く温かい彼の胸が心地好い
「別に泣くなとは言わん。忘れろとも言わん。だがこの世にいない人間のことばかり考えていては今在るものを見失う」