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果てのない海に呑まれて
第8章 還らない者
リリアに言っているのだろうか
だがその言葉は半ば自分自身に言い聞かせているようでもあった
「今お前の傍にいるのは父ではない。私だ。お前を慰め守ることができるのも、私だけだ」
リリアを抱くレオンの腕に一層力が籠る
「……クスッ」
リリアは思わず小さく笑ってしまった
「本当に、自信家なんだから」
「事実を言ったまでだ」
彼の腕の中で、リリアはクスクスと笑い続ける
だがそれは、先ほどの強がって馬鹿にしたようなものとは全く異なっていた
彼によって少し救われたのは事実
少し心を許してみれば、彼の尊大な態度はちょっとだけ滑稽で、それでも本当のことで。
絶対と感じさせる何かを持っていた
「……おい、いつまで笑っているんだ。早く寝ろ」
「うん…クスッ……分かった」
珍しく素直に応じた彼女にレオンは意外そうに眉を吊り上げる
"胸……温かい…な……"
やはり初めての船旅や大きな環境の変化に疲れたのだろう、少し落ち着くとリリアはあっという間に寝入ってしまった
「……」
そんな彼女をレオンは長いことじっと見つめていた
自分の腕の中で泣き、笑い、安心したように眠る小さな少女