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【寵姫】籠の中の牝獣たち
第2章 第一章 歪み

「遅くなりますから、先にお休みくださいと申し上げましたのに」
そう言いながら振り返った智恵子の表情には、少なくとも、声の主を咎めるような感情は微塵も含まれていなかった。
「そう言って、私が寝てしまっていると淋しがるでしょう」
恐れ入ります、と一礼した智恵子は相手を見やった。リビングから寝室へと繋がる扉、その前で少女がはにかんだ笑みを浮かべていた。
夜が明ける刹那を切り取ったような、光の当たり方で茶色が僅かにのぞく黒髪。それに比して肌は僅かな朱を感じさせる白。日本人離れした白い肌は、遠い祖先に僅かに混じった異国の血によるものと、智恵子は聞いたことがあった。
顔は幼さを残し、まだ少女の域を脱出しきってはいない。だが、近い将来艶やかな女性へ成熟するのが目に見えるような印象があった。
智恵子を待って起きていたのが少々辛かったのだろうか。本来なら丸くぱっちりとしている眼が、今は目尻が下がって幼い印象をいや増している。
「その様子ではずいぶん眠ってしまいたかったでしょうに、ありがとうございます」
また子供扱いして、と応えた少女はワンピース型のルームウェアを着ていた。
そう言いながら振り返った智恵子の表情には、少なくとも、声の主を咎めるような感情は微塵も含まれていなかった。
「そう言って、私が寝てしまっていると淋しがるでしょう」
恐れ入ります、と一礼した智恵子は相手を見やった。リビングから寝室へと繋がる扉、その前で少女がはにかんだ笑みを浮かべていた。
夜が明ける刹那を切り取ったような、光の当たり方で茶色が僅かにのぞく黒髪。それに比して肌は僅かな朱を感じさせる白。日本人離れした白い肌は、遠い祖先に僅かに混じった異国の血によるものと、智恵子は聞いたことがあった。
顔は幼さを残し、まだ少女の域を脱出しきってはいない。だが、近い将来艶やかな女性へ成熟するのが目に見えるような印象があった。
智恵子を待って起きていたのが少々辛かったのだろうか。本来なら丸くぱっちりとしている眼が、今は目尻が下がって幼い印象をいや増している。
「その様子ではずいぶん眠ってしまいたかったでしょうに、ありがとうございます」
また子供扱いして、と応えた少女はワンピース型のルームウェアを着ていた。

