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砂の人形
第2章 パレードの夜
「姫様、体を拭きましょう」
「触らないで!」
そう言って僕の手を払いのけようとする姫様にまたがって、顔を覗き込む。違和感があって、姫様の顎を掴んだ。顔を背ける姫様を無理やりこちらに向かせる。涙で曇った黒い瞳、涙の筋の残る上気した頬。それよりも目に付いたのは、腫れ上がった唇……指を入れ、唇をめくると、血の滲む傷跡がいくつもあった。
「どうしてこんなことを」
「どうして? あなた、私に何をしたのか分かっていないの? あんなことで声をあげさせられるくらいなら……」
「これを当ててください」
言葉を遮って、持っていたタオルを押しあてる。
僕がなにをしたか? 僕はただ、命令に従っただけ。それが姫様のためであり、僕の欲望も満たせるはずだった。なのに今、僕は前より渇いてる。
姫様、あなたが初めて、はっきりと僕を拒絶したから。
「テルベーザ」
タオル越しのくぐもった声で、姫様が僕を呼んだ。さっきまで怒っていたくせに。涙で濡れた眼差しが憐れむように僕を見上げていた。非力な小さな手が、遠慮がちに僕の手に重なる。
「震えてる」
そう言う自分の手だって震えているのに。
「ねえ、テーゼ。本当はあなた……」
「触らないで!」
そう言って僕の手を払いのけようとする姫様にまたがって、顔を覗き込む。違和感があって、姫様の顎を掴んだ。顔を背ける姫様を無理やりこちらに向かせる。涙で曇った黒い瞳、涙の筋の残る上気した頬。それよりも目に付いたのは、腫れ上がった唇……指を入れ、唇をめくると、血の滲む傷跡がいくつもあった。
「どうしてこんなことを」
「どうして? あなた、私に何をしたのか分かっていないの? あんなことで声をあげさせられるくらいなら……」
「これを当ててください」
言葉を遮って、持っていたタオルを押しあてる。
僕がなにをしたか? 僕はただ、命令に従っただけ。それが姫様のためであり、僕の欲望も満たせるはずだった。なのに今、僕は前より渇いてる。
姫様、あなたが初めて、はっきりと僕を拒絶したから。
「テルベーザ」
タオル越しのくぐもった声で、姫様が僕を呼んだ。さっきまで怒っていたくせに。涙で濡れた眼差しが憐れむように僕を見上げていた。非力な小さな手が、遠慮がちに僕の手に重なる。
「震えてる」
そう言う自分の手だって震えているのに。
「ねえ、テーゼ。本当はあなた……」