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砂の人形
第3章 過去の残り火
「騎士の務めが何かご存知かしら、盗賊さん」
「宮殿の警備、城下町の治安維持、周辺砂漠の安全確保、武術演習、装備の手入れ、それに鉱山の安全確認。ああ、それから」
騎士になって数か月、テルベーザは騎士の務めのほとんどを理解していた。ただ一つを覗いて。
「元です。僕は元盗賊です」
「あらそう。元盗賊さん、一つお忘れだわ。貴人の付添をね」
「姫様。またその話ですか」
彼は大きく溜息をついて、辺りを見回した。
明け方も近い中庭にはまだ鉱石ランプが点いていたけれど、人影はなかった。東の空はやや白みかけていて、もうみんな寝室にいる時間帯。こんな時間じゃなければ、テルベーザは捕まらないんだもの。
「いいですか。貴人の付添なんかやってるのは、名家出身の騎士だけですよ。僕ら騎士にも階級ってものがあります。新入りの盗賊上がりの僕など、最下級なんです。働かない連中の分も僕が動かなきゃいけません」
「じゃあ私の付添は、誰がやるのよ」
「誰もしません」
あんまりきっぱり言ってくれるから、危うく涙が出るところだったわ。なんとか踏みとどまったけど、テルベーザには気づかれたかもしれない。
「姫様、急には無理なんです。今はまだ無理だと言っているだけです」
「私はもう我慢できないの。一人ぼっちは嫌。みんなが私のこと馬鹿にしてるの知っているもの。騎士も侍女も持てない、孤児王女だって言ってる」
「そんなこと言わせません」
「あなたにはそんな力、ないじゃない!」
責めるように言ってしまってから後悔した。実のところ、どうでもいいのよ。義母様たちやその取り巻きが何を言っていたって。ただ、テルベーザがそばにいてくれないのが不満だったの。それをどう伝えていいのか、よくわからない。あまり、他人と話すことなかったから。
「今はまだ、そうですけど」
彼は低くつぶやいた。気分を悪くさせたのだと思うと悲しかった。
「僕が立派な騎士になれば、あなたを守れるんです。きっと、いつか。そのうちに」
「宮殿の警備、城下町の治安維持、周辺砂漠の安全確保、武術演習、装備の手入れ、それに鉱山の安全確認。ああ、それから」
騎士になって数か月、テルベーザは騎士の務めのほとんどを理解していた。ただ一つを覗いて。
「元です。僕は元盗賊です」
「あらそう。元盗賊さん、一つお忘れだわ。貴人の付添をね」
「姫様。またその話ですか」
彼は大きく溜息をついて、辺りを見回した。
明け方も近い中庭にはまだ鉱石ランプが点いていたけれど、人影はなかった。東の空はやや白みかけていて、もうみんな寝室にいる時間帯。こんな時間じゃなければ、テルベーザは捕まらないんだもの。
「いいですか。貴人の付添なんかやってるのは、名家出身の騎士だけですよ。僕ら騎士にも階級ってものがあります。新入りの盗賊上がりの僕など、最下級なんです。働かない連中の分も僕が動かなきゃいけません」
「じゃあ私の付添は、誰がやるのよ」
「誰もしません」
あんまりきっぱり言ってくれるから、危うく涙が出るところだったわ。なんとか踏みとどまったけど、テルベーザには気づかれたかもしれない。
「姫様、急には無理なんです。今はまだ無理だと言っているだけです」
「私はもう我慢できないの。一人ぼっちは嫌。みんなが私のこと馬鹿にしてるの知っているもの。騎士も侍女も持てない、孤児王女だって言ってる」
「そんなこと言わせません」
「あなたにはそんな力、ないじゃない!」
責めるように言ってしまってから後悔した。実のところ、どうでもいいのよ。義母様たちやその取り巻きが何を言っていたって。ただ、テルベーザがそばにいてくれないのが不満だったの。それをどう伝えていいのか、よくわからない。あまり、他人と話すことなかったから。
「今はまだ、そうですけど」
彼は低くつぶやいた。気分を悪くさせたのだと思うと悲しかった。
「僕が立派な騎士になれば、あなたを守れるんです。きっと、いつか。そのうちに」