この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
砂の人形
第5章 引力
「あまり広くしてしまうと、熱がこもりませんから」
そう言うテルベーザの声はいつも通りだから、私は余計に恥ずかしくなる。どうしていつも私だけこんな風になってしまうの?
テルベーザがそばに来ると胸が詰まって息ができない。言いたい言葉は一目散に体の奥底に引っ込んでしまって……彼が奥までやってくると、溢れ出しそうになる。
「毛布を一枚下に敷いて、その上に横になってください。もう一枚を上に掛けて」
「あなたはどうするのよ」
「僕は平気ですよ。皮鎧はけっこう暑いんです」
「そんなもの着て、ちゃんと休めるの?」
「深く眠るつもりはありませんから。僕は座って仮眠を取ります」
そんな話がしたいんじゃないのよ。
ねえ、本当にお父様の命令じゃないのよね? 私のためについてきてくれたのよね? さっきだって、ペテ様に嫉妬してくれただけなのよね?
私のこと、愛してるんでしょ?
声にならない言葉に溺れて、目頭が熱くなる。
「姫様はゆっくりお休みください。毛布を敷きますから」
「いい、自分でできるわ」
暗闇の中でもう一枚の毛布を手繰り寄せる。テルベーザは入口の前で胡坐をかいたようだった。そこからできるだけ離れた場所に毛布を敷く。それでも、狭い天幕の中ではすぐ隣だけど。
「狭すぎるわ」
「すみません」
毛布の上に横たわると、すぐ鼻先にテルベーザの膝があった。悔しいけれど、額が吸い寄せられる。テルベーザは膝をどかすこともせずに、じっと動かない。