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砂の人形
第5章 引力
目が覚めるとすでに天幕は解体されて、透明感のある夜明けの空が見えた。物音を振り返ると、テルベーザが荷物を駱駝に積んでいるところだった。私も起き上がり、毛布をまとめて持っていく。
「暑さを凌げるところまで進みます」
「昼までに、オアシスに着く?」
「いえ。あと二日半はかかります」
「そんなに?」
「引き返しますか?」
テルベーザは、手を止めて私を見下ろした。テルベーザにしてみれば、その方がいいのよね? お父様に申し開きがたつもの。
「いいえ。進みましょう」
本当はアルムカンに帰りたい。お尻は痛いし、顔中を覆っている砂除けが煩わしい。それでも風が吹くと、細かい砂が目に入って涙が出てしまうし。これに昼の暑さが加わったら、頭がおかしくなってしまう。
でも私は、テルベーザに思い知らせたいの。私が立派な王女であること。凶勢を予言されたお父様なんかよりずっと。
荷物をまとめて軽い食事を取ってから、私たちは北西に進路を決めて、駱駝を歩かせた。