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砂の人形
第6章 自動人形
「テルベーザ?」
私の口をふさぎ、テルベーザは身を伏せた。耳を地面に押し当てて、何かを確かめているようだった。
「大勢の足音がします。人間です」
潜めた声でそう言うと、私にここにいるように言って、すぐに砂丘を駆け上がって行った。
こんなに日が出ているのに、旅人が歩いているなんて……おかしい。ひょっとしたら。
私も、砂除けだけを頭から被って、テルベーザを追った。
テルベーザは砂丘の頂上から、唖然と下の行列を見下ろしていた。息苦しいほどの日差しの中、一糸乱れぬ足並みで東を目指す一群は、五十人はいそうだ。彼らは皆揃いのターバンと白の上下を着ていて、そして、同じ表情で歩みを進めている。
同じような、じゃない。まったく同じ表情、まったく同じ顔で。
「何だ、あれ……アルムカンに向かってるのか?」
「自動人形……!」
私の言葉に、テルベーザが振り返る。
「何か、知っているんですか?」
テルベーザには、話せない。
私は、逃げるように元来た方に駆け下りた。砂丘に足を取られて転びそうになるのを、すぐに追いついてきたテルベーザが抱き止める。
「姫様、どうされたんですか」
「別に、何でもないわ」
「自動人形と言いましたね? 何のことです? ルニルカンへ行くことと、何か関係があるんですか?」
「あなたには関係ないことよ」
「関係あります!」
テルベーザは、怒鳴って私の顎をつかむ。それから私の目を覗き込んだ。
「僕はあなたを選びました、姫様……サルーザ様の処罰を覚悟で、ここにいます。あなたのために。だからもう、隠し事なんてしないでください」
そんな風に言われたら、嬉しくてかなわない。体中が心臓になったみたいに震えた。
「本当……? 本当に、お父様より私を選んでくれる?」
「でなきゃここにはいません」
「……自動人形は」
私は、言葉を詰まらせながら話した。
あまり、うまくは話せなかった。要領を得ない言い方で、順も追えず、思い出したことをぽつぽつと口にした。
いつからから、あの双子が奇妙な商人を城へ引き入れたこと。室内でも砂除けを二重三重に被っていて、男なのか女なのかもわからないけど、背が高いからきっと男だと思う。