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砂の人形
第6章 自動人形
その人が来ると、お父様はいつも機嫌が良かったわ。いつもはなんの音沙汰もないのに、あの商人の幌が来た日には、決まって私に会いに来た。でもなぜか、そんな日のお父様に会ったってちっとも嬉しくなくて。
不気味でさえあった。あの商人が、少しずつお父様を蝕んでいる。そう思った。
それである日、二人の密会を盗み聞きしてやったの。あの商人、自動人形の作り方を教えてやるって言ってた。少しも食べず、眠らず、考えない人形の作り方。毎年、かなりの数の鉱山夫が亡くなるでしょ? そういう危険な仕事は、自動人形にやらせればいいって。そしたら、お父様笑っておっしゃったわ。
戦争も、そいつらにやらせればいいって。
お父様は、ルニルカンに戦争を仕掛けるつもりなのよ。そしてあの肥沃な大地と恵みを奪うおつもりなんだわ。アルムカンのために、ご自分の名声のために。
「戦争になれば、当然ルニルカンからの輸入は止まるわ。城の食糧庫はもう四割の貯蓄しかない。半年足らずで底をつくでしょ。国民は飢えて一揆を起こすかもしれない。そうなったら、予言の通りだわ。国を滅ぼす凶勢の王……」
天幕の中で、テルベーザの膝に顔を預けて、私は唇を噛み締めた。ペテ様にこのことを打ち明けて、お父様の準備が整う前に、私とアルムカンを訪れてもらう。それが私の計画だった。できるだけ沢山の兵士を従えて交渉するの。自動人形を破棄しなければ……お父様を討つ。大きな戦を回避するには、頭を摘むのが一番だわ。例えそれがお父様であっても。