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砂の人形
第2章 パレードの夜
アルムカンの街は日暮れに目を覚ます。
日中は、耐え難いほどの日差しが降り注ぐからだ。緑の根付かないこの土地に日陰はなく、息をしたなら、痛むほど熱い空気が喉を這い、溶けた鉛のように内側から体を舐める。焼けた砂は靴を焦がし、むき出しの髪は縮れる。
しかしもっとも厄介なのは、砂の煌きだ。あまりに眩しい黄金の照り返しは、網膜を焼き神経を狂わせる。長年、この砂漠を放浪してきた僕の頭は、すでにおかしいんだろう。
「テルベーザ」
姫様が呼ぶ声に顔を上げる。姫様は窓の外を見下ろしたまま、こちらを振り返らない。夕闇の中、街には鉱石ランプの緑や紫、青のぼんやりとした明かりがあちこちに浮いている。その景色の中で、黒髪を結い上げた姫様のうなじが一層白く見えた。
その華奢な首筋を見ると、暗い衝動が走る。今すぐにでも、楽になりたい。長年苦しんできた渇きを終わりにしたい。 そう思うことを止められない。
「見て。皆さん、今年もとてもきれいだわ」
「ええ」
その細い腰を抱き寄せて、華奢なリボンをむしり取ってやりたい。丁寧に結い上げられた髪をかき乱して、散りばめられた宝石も、百合の花も、この人に付きまとう全部を壊して。乱暴に体を繋ぎたい。
そしたら姫様は泣くだろうか。それとも歯をきつく噛み締めて、無言で全部受け入れてしまうんだろうか。毎日の行為のように。
僕は姫様の隣に並び、城の正面広場を見下ろした。そこには豪奢に飾り立てられた駱駝と山車が整列し、主を乗せて、順番に城下街へと繰り出していく。
日中は、耐え難いほどの日差しが降り注ぐからだ。緑の根付かないこの土地に日陰はなく、息をしたなら、痛むほど熱い空気が喉を這い、溶けた鉛のように内側から体を舐める。焼けた砂は靴を焦がし、むき出しの髪は縮れる。
しかしもっとも厄介なのは、砂の煌きだ。あまりに眩しい黄金の照り返しは、網膜を焼き神経を狂わせる。長年、この砂漠を放浪してきた僕の頭は、すでにおかしいんだろう。
「テルベーザ」
姫様が呼ぶ声に顔を上げる。姫様は窓の外を見下ろしたまま、こちらを振り返らない。夕闇の中、街には鉱石ランプの緑や紫、青のぼんやりとした明かりがあちこちに浮いている。その景色の中で、黒髪を結い上げた姫様のうなじが一層白く見えた。
その華奢な首筋を見ると、暗い衝動が走る。今すぐにでも、楽になりたい。長年苦しんできた渇きを終わりにしたい。 そう思うことを止められない。
「見て。皆さん、今年もとてもきれいだわ」
「ええ」
その細い腰を抱き寄せて、華奢なリボンをむしり取ってやりたい。丁寧に結い上げられた髪をかき乱して、散りばめられた宝石も、百合の花も、この人に付きまとう全部を壊して。乱暴に体を繋ぎたい。
そしたら姫様は泣くだろうか。それとも歯をきつく噛み締めて、無言で全部受け入れてしまうんだろうか。毎日の行為のように。
僕は姫様の隣に並び、城の正面広場を見下ろした。そこには豪奢に飾り立てられた駱駝と山車が整列し、主を乗せて、順番に城下街へと繰り出していく。