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砂の人形
第2章 パレードの夜
今日は年に一度の感謝祭だ。王宮が国民への感謝を表すため、王の道に食事の席を設けて招待する。国民全員分の食事に水、それに気持ちばかり、商品にならない小さな宝石細工を配り、王族のパレードを観覧してもらうのが毎年の習わしだ。王子、王女はそれぞれの権威を示すため、母方の家が趣向を凝らした山車を準備し、名家出身の騎士をぞろりとはべらせて国民の前を優雅に通り過ぎる。
モスリーン様の母上は、姫様を出産してすぐ亡くなった。その上、遠い辺境の民間のご出身だという。モスリーン様には後ろ盾がなく、そのため本物の騎士もいない。哀れに思った国王のサルーザ様が、僕を騎士の代わりにとあてがったのだ。盗賊上がりの僕を。
「僕らも、そろそろ行きましょう」
「そうね」
姫様が振り向く。目を伏せて、僕の胸の辺りしか見ていない。もう昔のようにはできないと分かっていても、虚しかった。この人の眼差しに見つめられることが、僕に許された数少ない安らぎだったのに。
交わらない視線、言いようもなくぎこちない空気の中、ほっそりとした手が差し出され、その指先をそっと支える。寝台の上では決して僕に触れてくれない強情な指は、ひんやりと冷たかった。
モスリーン様の母上は、姫様を出産してすぐ亡くなった。その上、遠い辺境の民間のご出身だという。モスリーン様には後ろ盾がなく、そのため本物の騎士もいない。哀れに思った国王のサルーザ様が、僕を騎士の代わりにとあてがったのだ。盗賊上がりの僕を。
「僕らも、そろそろ行きましょう」
「そうね」
姫様が振り向く。目を伏せて、僕の胸の辺りしか見ていない。もう昔のようにはできないと分かっていても、虚しかった。この人の眼差しに見つめられることが、僕に許された数少ない安らぎだったのに。
交わらない視線、言いようもなくぎこちない空気の中、ほっそりとした手が差し出され、その指先をそっと支える。寝台の上では決して僕に触れてくれない強情な指は、ひんやりと冷たかった。