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砂の人形
第8章 白昼夢
テルベーザは色んな方法で私を果てさせようとした。一方的な高い壁みたいに押し寄せてくる快楽は、私を孤独に追いやる。これじゃ、宮殿にいた頃となにも変わらない。
溺れそうになりながら、何度もテルベーザに呼びかける。彼は聞き入れてくれない。様々な姿勢で組み敷かれ、いいところばかりなぶられて、私はそのうち喘ぐ声しかあげられなくなっていった。
どうして……テルベーザは「あんなこと」したくないのかな。あなたが教えてくれた「あんなこと」なら、あなたのことがよく分かる。緩やかな刺激にうっとりと酔いしれる様や、ぎりぎりまで快楽を湛えて踏みとどまっているときの健気さ。溢れる直前には甘えるように脈打って、震えながら私から離れていく。
あなたをもっと知りたい。あの双子がいない今なら、それが叶う気がするのに。
「姫様」
目尻からこぼれた涙が、こめかみに向かって落ちていく。不意に顔を上げたテルベーザは、苛む手を止めて、まつげに残った涙を拭ってくれた。
「……あれは普通の行為じゃありません。ただあなたに体の使い方を覚えてもらうためにやっているだけです」
「知ってる」
「他のところを触って気を紛らわせていないと、辛くてできないでしょう」
「ええ」
「ならどうして、そんなことしたがるんです」
正直に答えたら、どうなるのかしら。もし勘違いだと思い知らされたら? 最後の支えを失ったら、きっと私はダメになってしまう。
いや、いっそダメになってしまえばいいんだわ。そしたら何の未練もなく、ペテ様に嫁ぐことができるじゃない。
「……テーゼが気持ちよさそうにしてくれるから」
やっとひねり出した言葉を聞いても、彼の表情は変わらなかった。ねえ、何も思わないの? 否定も肯定も、その目の中には浮かばない。今、何を考えているの? 私にもあなたのこと、教えて。
「それとも、嫌だった……? もちろん、あの双子のことは私も嫌だけど。そうじゃなくて、私とのことだけだったら……」
続ける言葉が見つからなくて、私は口を閉じた。テルベーザは居心地悪そうに身じろぎして、それから視線をそらした。
それが彼の答えだと思ったら、自然と手足が、唇が震えた。顔を背けても、体を重ねているせいで、きっと全部伝わってしまう。