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砂の人形
第8章 白昼夢
「姫様」
テーゼの温かい舌が涙を舐めとる。大きな手が、震える手と重なる。いつもと同じように触れて、それで誤魔化すつもりなの? 私が何を言っても無視して、何事もなかったみたいにするの? あの時みたいに。
「姫様、もう一回、こっち向いて」
「やめて。もういい。まだあなたに期待するなんて、馬鹿だったわ」
「すごく気持ちよかったですよ。あなたが一番分かってるでしょう」
……今の、本当にあなたの口から出た言葉なの。
私はもう一度テルベーザを見上げようとして、そのまま、砂の上で抱きすくめられた。胸板に押し付けられて、とても顔を見ることができない。
「テルベーザ、それ、本心なの」
「その様子じゃ、僕がなんと答えても信じないでしょうね」
「そうね。せめて顔くらい見て言ってくれなきゃね」
「無理です。恥ずかしいから」
そんな風に言われると、急に私までどぎまぎしてきて、頬が熱くなった。
「そ……そう思ってるなら、その……してくれたっていいじゃない」
「実は僕もそう思っているんですけど」
「けど?」
「もうこの話、やめません?」
「どうして? あなたやっぱり私に何か隠しているの?」
「そりゃ僕にも知られたくないことくらいあります」
「やめて。あなた、私になんでも話せって言ったじゃない。あなたも隠し事なんかしないで。テーゼのこと、もう疑いたくないの」
そんな風に押し問答してようやく、テルベーザは折れた。わざとらしくため息なんかついて、それでも、私の希望通りにちゃんと、私の目を見て。
「すみません。どうしても勃たないんです」
それって一体どういう意味なのかしら。