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潮騒
第11章 正一郎の帰還 ー白波ー
めっきり遅くなった朝日の薄明かりの中、二人の身体は乾いた互いの体液で白くなっている。
菊乃はそろそろと立ち上がり、単衣の腰紐を結び、着物を羽織った格好で、音を立てぬ様、そろそろと階下に降り、土間の水瓶から、昨夜の炊事に使った残り水を汲んで、手拭いを絞り、また二階に上がった。手拭いを絞っただけでも、冷たい水が赤切れの指に染みた。
二人の身体を丁寧に拭くと、冷たさに身が引き締まる。
そして単衣を整えると、窓を開けて情交のあとのすえた臭いを追い出す。
キンとした冬の冷たい空気が、籠った臭いを洗ってくれるような気がした。
正一郎も起きて着物を着ると、顔を洗いに階下に降りて行った。
向かいの窓からは見えぬ位置で、郁男に乳をやり、再び寝かすと、二人の布団はすぐに押入れにはしまわず、畳の上に広げた。
階下で朝食用の飯を炊き、隣で湯を沸かして味噌汁を作る。
飯が炊き上がる頃、家族が起きてきた。
耕太郎不在の今は、正一郎が家長だ。
正一郎、浩二郎、良太郎、ヨシ、タエ、タエの子の喜美子、そして自分の順で膳を並べ、箸を付ける頃には正一郎はもう食べ終えて席を立っている。
以前と何も変わらぬ、朝の情景だった。
菊乃はそろそろと立ち上がり、単衣の腰紐を結び、着物を羽織った格好で、音を立てぬ様、そろそろと階下に降り、土間の水瓶から、昨夜の炊事に使った残り水を汲んで、手拭いを絞り、また二階に上がった。手拭いを絞っただけでも、冷たい水が赤切れの指に染みた。
二人の身体を丁寧に拭くと、冷たさに身が引き締まる。
そして単衣を整えると、窓を開けて情交のあとのすえた臭いを追い出す。
キンとした冬の冷たい空気が、籠った臭いを洗ってくれるような気がした。
正一郎も起きて着物を着ると、顔を洗いに階下に降りて行った。
向かいの窓からは見えぬ位置で、郁男に乳をやり、再び寝かすと、二人の布団はすぐに押入れにはしまわず、畳の上に広げた。
階下で朝食用の飯を炊き、隣で湯を沸かして味噌汁を作る。
飯が炊き上がる頃、家族が起きてきた。
耕太郎不在の今は、正一郎が家長だ。
正一郎、浩二郎、良太郎、ヨシ、タエ、タエの子の喜美子、そして自分の順で膳を並べ、箸を付ける頃には正一郎はもう食べ終えて席を立っている。
以前と何も変わらぬ、朝の情景だった。