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潮騒
第2章 身代わりの花嫁 ー風波ー
祝言の席。
隣に座る、夫となる男は名を正一郎(しょういちろう)と言い、歳は二十六、ということだった。無口で無愛想。
こちらをチラと見てもにこりともしない。
座っていても身体が大柄なのが良く分かる。
黒い着物を着、黙ったまま注がれる祝杯を呑み干す。
結局、宴が終わるまで一言も喋らぬままだった。
そして、夜。
寝間に通され、吊られた蚊帳の外で、単衣のまま、ちょこんと正座して待った。
どのくらい経ったか。
がらりと襖が開いて、入ってきた正一郎は酔って足元も覚束ない。
立ち上がると身の丈六尺(182cm)は超えようか、という大男で、部屋に入る際も鴨居に頭が擦れたようで、
「痛ぇ…」
と呟いた。
そのまま菊乃の前にどかりと腰をおろすと、酒臭い顔を近づけ、座った目で菊乃を見た。
「顔はまぁまぁか…」
ふん、とひとつ吐いた息も酒臭い。
菊乃は思わず顔を背ける。
隣に座る、夫となる男は名を正一郎(しょういちろう)と言い、歳は二十六、ということだった。無口で無愛想。
こちらをチラと見てもにこりともしない。
座っていても身体が大柄なのが良く分かる。
黒い着物を着、黙ったまま注がれる祝杯を呑み干す。
結局、宴が終わるまで一言も喋らぬままだった。
そして、夜。
寝間に通され、吊られた蚊帳の外で、単衣のまま、ちょこんと正座して待った。
どのくらい経ったか。
がらりと襖が開いて、入ってきた正一郎は酔って足元も覚束ない。
立ち上がると身の丈六尺(182cm)は超えようか、という大男で、部屋に入る際も鴨居に頭が擦れたようで、
「痛ぇ…」
と呟いた。
そのまま菊乃の前にどかりと腰をおろすと、酒臭い顔を近づけ、座った目で菊乃を見た。
「顔はまぁまぁか…」
ふん、とひとつ吐いた息も酒臭い。
菊乃は思わず顔を背ける。