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潮騒
第2章 身代わりの花嫁 ー風波ー
正一郎はおもむろに菊乃の手を掴んだ。
格子窓から差し込む月明かりの中、正一郎は掴んだ菊乃の手をじっと見ている。
かと思うと急に手を離し、
「立て」
と命じた。
菊乃が戸惑っていると、苛ついた様子で声を荒げる。
「立て!」
びくりと震え、おずおずと立ち上がった。
座った状態で、目の前にある菊乃の腰を両手で挟むように パン!と叩く。
何事かと驚いて見下ろすと、ニヤ、と口角を吊り上げた。
神経質そうな細い目、眉間に刻み込まれた皺が気難しさを物語る。
整っているのに、男前と思えぬのは偏にこの仏頂面のせいだ、と気づいた。
格子窓から差し込む月明かりの中、正一郎は掴んだ菊乃の手をじっと見ている。
かと思うと急に手を離し、
「立て」
と命じた。
菊乃が戸惑っていると、苛ついた様子で声を荒げる。
「立て!」
びくりと震え、おずおずと立ち上がった。
座った状態で、目の前にある菊乃の腰を両手で挟むように パン!と叩く。
何事かと驚いて見下ろすと、ニヤ、と口角を吊り上げた。
神経質そうな細い目、眉間に刻み込まれた皺が気難しさを物語る。
整っているのに、男前と思えぬのは偏にこの仏頂面のせいだ、と気づいた。