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潮騒
第12章 時代のうねりー津波ー
菊乃が女の子で一人高等小学校に進む、となった時、なら私も、と手を挙げたのがタツノである。
地元の高等小学校で同じ組の女の子はタツノだけだったから、今でも大層仲が良かった。

高等小学校にまで進んだ菊乃でも、外国の事は地図の上でしか知らない。

真珠湾がどこにあるのかは分からなかったが、米国が日本と比べようもないくらい大きな国だということは知っている。英国も、日本よりは大きいし、何より、昔から戦争を繰り返し、領土を獲得したり植民地を作ったりしてきた国ばかりだ。
そんな国相手に喧嘩売って勝てるもんか。
一体何を考えて戦争なんぞ始めたんだろう。
もちろん、一介の田舎の主婦だとて、世間話の域でなら、支那事変や、清との戦争に勝ったことくらいは知っている。だが、清や露西亜に勝ったからと調子に乗ってるんじゃないか?
勝った勢いで突き進む、その原理は分からなくもないが、勢いだけで勝てるほど、甘い相手には思えなかったのだ。絶対負ける。菊乃は確信した。
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