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潮騒
第12章 時代のうねりー津波ー
昭和十八年。
啓三が二歳になった年。
この頃になると、戦地から遠く離れたこの田舎でも国民精神総動員の思想が定着し、
「欲しがりません勝つまでは」
「足らぬ足らぬは工夫が足らぬ」
「進め一億火の玉だ」
などの戦時標語が掲げられ、女子供も皆、耐乏生活を余儀なくされる。
子供たちは唱歌の時間に軍歌を習い、チャンバラや虫捕りよりも戦争ごっこでいかに軍功を挙げるかを競う。
最初の内こそ違和感を感じた菊乃も、次第に周りに感化され、一人一人が質素倹約に努め、弱気にならぬよう、と思うようになっていた。
そんな中、正一郎と浩二郎に赤紙が来た。
国民精神総動員、といったところで、実際身内に赤紙が届くとやはり内心は動揺した。
赤紙とは、招集令状であり、お国の為に死んで来い、という命令なのだから。
啓三が二歳になった年。
この頃になると、戦地から遠く離れたこの田舎でも国民精神総動員の思想が定着し、
「欲しがりません勝つまでは」
「足らぬ足らぬは工夫が足らぬ」
「進め一億火の玉だ」
などの戦時標語が掲げられ、女子供も皆、耐乏生活を余儀なくされる。
子供たちは唱歌の時間に軍歌を習い、チャンバラや虫捕りよりも戦争ごっこでいかに軍功を挙げるかを競う。
最初の内こそ違和感を感じた菊乃も、次第に周りに感化され、一人一人が質素倹約に努め、弱気にならぬよう、と思うようになっていた。
そんな中、正一郎と浩二郎に赤紙が来た。
国民精神総動員、といったところで、実際身内に赤紙が届くとやはり内心は動揺した。
赤紙とは、招集令状であり、お国の為に死んで来い、という命令なのだから。