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潮騒
第14章 終戦 ー崩れ波ー
そして、夏。
八月には、広島と長崎に新型の爆弾が落ちたと聞いた。

だがそれも、真偽の程は定かではなかった。
ラヂヲも新聞も、何処までが真実で何処からが偽りなのかわからなかったし、人の話もまた然り。
憶測がまことしやかに囁かれ、判断の基準もなく、何を信じていいのやら、さっぱりだった。

だが、八月十五日。
ラヂヲから流れる玉音放送。
菊乃の頭は真っ白になった。
戦争に負けた…

元より勝てる戦ではなかったのだ。
それなのに、これ程の犠牲を払ってようやっと降伏する決心をしたのか…

無機質な音声を聞きながら、歯を食いしばって泣いた。
何故もっと早くこの決断をしなかった…
もう数日、決断が早ければ、助かった命があったはずだ。
いま、この瞬間にも消えゆく命があるかもしれない。

国力に差がありすぎた。
一発逆転など、あり得なかったのだ。
もっと早く、英断が下されるべきだった…

家族を返せ。
失われた命を、
焼かれた街を、
踏みにじられた心を、
返せ…

返せ…


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