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潮騒
第14章 終戦 ー崩れ波ー
「阿呆!阿呆‼︎ どんだけ心配したと思てんの⁉︎ 無事やったら無事やて一言くらい連絡してぇな‼︎」

泣きながら幾度も握り拳で胸を叩く。
正一郎は苦笑しながら菊乃の身体をしっかりと抱き締めた。

束の間の抱擁の後、正一郎は意地の悪い切り出しとは裏腹に、優しく菊乃の肩を掴んで身体を離した。

「文句は後で聞く。腹減った。飯はこれからか?」

菊乃は眦を人差し指で拭い、鼻を啜って笑った。

「今から炊くとこやけど、ちょっと待っとって! 昨日の残りの握り飯、持ってくる。正一郎さんひとり?浩二郎さんは?」

「おるよ。足傷めとるから歩くの遅いんや。途中まで一緒に来たけど、菊乃はもう起きとるやろうから先に顔見せたれ言われてな。三叉路んトコで置いてきた。じき着くやろ。」

浩二郎らしい気遣いに思わず笑ってしまう。
そして急いで帰った所でタエはまだ起きて居ないこともちゃんと解っている。
その通りだ。

「わかった。ご飯も炊くし、風呂も沸かすわ。ほんで皆んな起こすな!」

「なんでもええから早よしてくれや。」

「そんなとこじゃ寒いやろ?火鉢付けとるから早よ上がり!」

菊乃はかじかむ指で重い火鉢を土間近くに移した。
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