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潮騒
第14章 終戦 ー崩れ波ー

「ホンマにもぅ! 帰って来るなら来るて連絡のひとつも入れるやろ、普通! 何も準備できへんやないの!」
風呂の焚き付けをし、土間に戻りながら、安心すると、次々と文句が溢れてくる。
正一郎は土間のたたきに腰掛け、火鉢に手を翳しながら軽く笑う。
「俺が筆不精なん知っとるやろ。浩二郎が葉書書いた、言うとったからもうえぇか、と思たんや。ついてないんか?」
「…見てない」
「…外地からの引き揚げ船が一旦下関についてな。浩二郎ともそこで会うたんやけど。そっからここまでの船が出るまで二三日居ったんや。浩二郎は俺より早よついとったらしいてな、そん時に書いた、言うとった。」
「手紙なんか着くかどうかわからんわ。…浩二郎さん、脚怪我しとるん?」
「怪我っちゅうほどやない。船から降り損ねて足挫いただけや。ホンマにトロくさいやっちゃで。」
「二人共、戦地で怪我は無かったんやね?」
「あぁ。運が良かった。」
そこに、浩二郎が片足を引き摺るようにして歩いてきた。
風呂の焚き付けをし、土間に戻りながら、安心すると、次々と文句が溢れてくる。
正一郎は土間のたたきに腰掛け、火鉢に手を翳しながら軽く笑う。
「俺が筆不精なん知っとるやろ。浩二郎が葉書書いた、言うとったからもうえぇか、と思たんや。ついてないんか?」
「…見てない」
「…外地からの引き揚げ船が一旦下関についてな。浩二郎ともそこで会うたんやけど。そっからここまでの船が出るまで二三日居ったんや。浩二郎は俺より早よついとったらしいてな、そん時に書いた、言うとった。」
「手紙なんか着くかどうかわからんわ。…浩二郎さん、脚怪我しとるん?」
「怪我っちゅうほどやない。船から降り損ねて足挫いただけや。ホンマにトロくさいやっちゃで。」
「二人共、戦地で怪我は無かったんやね?」
「あぁ。運が良かった。」
そこに、浩二郎が片足を引き摺るようにして歩いてきた。

