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潮騒
第15章 食卓の風景 ー波間ー
食事と後片付けを終えると、通常であれば皆仕事を始める。
だが、漁にしても船の乗り手である男がまだ揃わず、船からして燃料は殆ど供出させられており、出るに出られぬ。冬場であれば畑仕事とてなく、菊乃は洗濯にかかる。
ヨシはこのところ、縁者を頼って疎開してきた街の人間が持ってきた、ハイカラな着物を米や卵と交換し、それをせっせと解いては洋服を作るのに凝っている。
菊乃も裁縫は苦手ながら、ミシンを使っての洋裁は必要にかられてやってきた。だが、時間と根気のいる事で、日々の仕事の合間にひとつを仕上げる事が出来なかった。
その点ヨシは時間を持て余し、好きなだけミシンの前に座っていられた。
喜美子と郁男は学校に行き、啓三もこの頃は郁男について小学校に行っていた。
まだ入学する年ではないが、見るものが居ない幼い弟妹を学校に連れて行く者は珍しくなく、学校も、授業の邪魔さえしなければ特に咎めなかった。
だが、漁にしても船の乗り手である男がまだ揃わず、船からして燃料は殆ど供出させられており、出るに出られぬ。冬場であれば畑仕事とてなく、菊乃は洗濯にかかる。
ヨシはこのところ、縁者を頼って疎開してきた街の人間が持ってきた、ハイカラな着物を米や卵と交換し、それをせっせと解いては洋服を作るのに凝っている。
菊乃も裁縫は苦手ながら、ミシンを使っての洋裁は必要にかられてやってきた。だが、時間と根気のいる事で、日々の仕事の合間にひとつを仕上げる事が出来なかった。
その点ヨシは時間を持て余し、好きなだけミシンの前に座っていられた。
喜美子と郁男は学校に行き、啓三もこの頃は郁男について小学校に行っていた。
まだ入学する年ではないが、見るものが居ない幼い弟妹を学校に連れて行く者は珍しくなく、学校も、授業の邪魔さえしなければ特に咎めなかった。