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潮騒
第15章 食卓の風景 ー波間ー
朝沸かした、まだ温かい風呂に盥を持込み、正一郎と浩二郎の軍服とゲートルを洗濯する。
冬場は井戸水で洗うのが大層だったが、洗濯の為に湯を沸かすなど勿体ないと言われる。そしていつもなら、夜入った風呂は朝には冷たくなっていて、井戸端も風呂場も大して変わらぬ寒さだ。
だが今日ばかりは、温かい残り湯で洗濯できるので、菊乃は嬉しかった。
臭う服を盥の湯に漬け、石鹸をつけて洗う。
汚れて傷んだ生地は洗濯板で擦ると更に傷みが酷くなるが、捨てるわけにもいかぬ。
出来ることならもう着てほしくない。
二度と着る機会がありませんように。
何時でも着られるように、ではなく、押し入れに仕舞い込む為に、綺麗にするのだ。
そう思いながら丁寧に洗った。
耕太郎は干した藁を砧で丁寧に打ち、撚って縄や草鞋を編む。菊乃も手が空けば手伝うことがあったが、やはり長年培った勘と、歳はとっても男の力なのか、耕太郎の撚った縄や草鞋はしっかりとして、菊乃が見よう見まねで作ったものよりずっと長持ちした。
正一郎と浩二郎は、休み休みとはいえ、夜通し歩いてさすがに疲れたようで、腹がくちくなると寝てしまった。
昼時になり、菊乃は昼飯の準備をした。
冬場は井戸水で洗うのが大層だったが、洗濯の為に湯を沸かすなど勿体ないと言われる。そしていつもなら、夜入った風呂は朝には冷たくなっていて、井戸端も風呂場も大して変わらぬ寒さだ。
だが今日ばかりは、温かい残り湯で洗濯できるので、菊乃は嬉しかった。
臭う服を盥の湯に漬け、石鹸をつけて洗う。
汚れて傷んだ生地は洗濯板で擦ると更に傷みが酷くなるが、捨てるわけにもいかぬ。
出来ることならもう着てほしくない。
二度と着る機会がありませんように。
何時でも着られるように、ではなく、押し入れに仕舞い込む為に、綺麗にするのだ。
そう思いながら丁寧に洗った。
耕太郎は干した藁を砧で丁寧に打ち、撚って縄や草鞋を編む。菊乃も手が空けば手伝うことがあったが、やはり長年培った勘と、歳はとっても男の力なのか、耕太郎の撚った縄や草鞋はしっかりとして、菊乃が見よう見まねで作ったものよりずっと長持ちした。
正一郎と浩二郎は、休み休みとはいえ、夜通し歩いてさすがに疲れたようで、腹がくちくなると寝てしまった。
昼時になり、菊乃は昼飯の準備をした。