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潮騒
第3章 婚家の実情 ー磯波ー
更に驚いたのは、弟の浩二郎の嫁、タエは、元々正一郎の嫁としてこの家に来た女だという。
祝言の後、幾日もたたぬうちに正一郎の不興を買い、大喧嘩をして正一郎が家から叩き出そうとした。
幾らなんでも数日で暇を出すなど、縁談を交わした親の面子も潰れるし、何より狭い集落の中、何か公にせぬ問題があって返されたと噂が立ってはタエの先に差し障る、と、両親が宥めても正一郎は聞き入れず、仕方なし、まだ独り身であった浩二郎の嫁にしたというのだ。
浩二郎はそれでいいのか、とも思ったが、浩二郎の人柄は兄と本当に血が繋がっているのか不思議なほどに温和で、何事もあるがままに受け止める、といった風情だった。
正一郎はタエの何がそんなに気に入らなかったのか、と思ったが、その理由はすぐにわかった。
タエは浜坂、というこの集落でも大きな 家の本家の娘で、幼い頃から皆に可愛がられて育ったため、我儘放題なのだ。
嫁として働くどころか膳の上げ下げすらせず、ずっと座ったきりだという。
浩二郎はそんな妻に嫌な顔一つせず、「ええよ、お前は座っとき」と優しい声をかけ、畑仕事だけでなく身の回りの世話一切をしている、ということだった。
祝言の後、幾日もたたぬうちに正一郎の不興を買い、大喧嘩をして正一郎が家から叩き出そうとした。
幾らなんでも数日で暇を出すなど、縁談を交わした親の面子も潰れるし、何より狭い集落の中、何か公にせぬ問題があって返されたと噂が立ってはタエの先に差し障る、と、両親が宥めても正一郎は聞き入れず、仕方なし、まだ独り身であった浩二郎の嫁にしたというのだ。
浩二郎はそれでいいのか、とも思ったが、浩二郎の人柄は兄と本当に血が繋がっているのか不思議なほどに温和で、何事もあるがままに受け止める、といった風情だった。
正一郎はタエの何がそんなに気に入らなかったのか、と思ったが、その理由はすぐにわかった。
タエは浜坂、というこの集落でも大きな 家の本家の娘で、幼い頃から皆に可愛がられて育ったため、我儘放題なのだ。
嫁として働くどころか膳の上げ下げすらせず、ずっと座ったきりだという。
浩二郎はそんな妻に嫌な顔一つせず、「ええよ、お前は座っとき」と優しい声をかけ、畑仕事だけでなく身の回りの世話一切をしている、ということだった。