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潮騒
第4章 嫁 ー細波ー
義母のヨシは、長女のチヨを大層可愛がっており、嫁が来たからにはもう母としての仕事は終わったとばかり、家事を菊乃に押し付けて、近所に行って同年代のご隠居さんと長話をしたり、チヨと日がな一日良太郎の服を縫ったりしている。芝居がかかるとなればチヨと二人連れ立って観に行く。
代わりに菊乃は朝から家族全員の朝食を作り、八人分の洗濯を終えて干し終わる頃には昼食の時間になり、午後から畑に出て少し働いては洗濯の取り入れと夕食、風呂の支度がある。朝から晩まで働き詰めで、休む間も無く、風呂も最後の湯はとうにぬるくなり、一日の疲れも取れない。
実家ではいつも、父と兄の後で、母の厳しいしつけもあり、湯もそれほど濁ってはいなかったが、ここでは違った。正一郎をはじめ、七人もの人が入った後の湯は何やら心地悪く、熱い新湯に入りたい、と泣きそうになった。
正一郎は菊乃に興味がないのか、夜も指一本触れようとしない。初日に品定めされた菊乃としては、不思議ではあったが、疲れ果てて布団に入る頃には泥のように眠りに落ちてしまうため、正直有り難かったし、深く考える余裕もなかった。
代わりに菊乃は朝から家族全員の朝食を作り、八人分の洗濯を終えて干し終わる頃には昼食の時間になり、午後から畑に出て少し働いては洗濯の取り入れと夕食、風呂の支度がある。朝から晩まで働き詰めで、休む間も無く、風呂も最後の湯はとうにぬるくなり、一日の疲れも取れない。
実家ではいつも、父と兄の後で、母の厳しいしつけもあり、湯もそれほど濁ってはいなかったが、ここでは違った。正一郎をはじめ、七人もの人が入った後の湯は何やら心地悪く、熱い新湯に入りたい、と泣きそうになった。
正一郎は菊乃に興味がないのか、夜も指一本触れようとしない。初日に品定めされた菊乃としては、不思議ではあったが、疲れ果てて布団に入る頃には泥のように眠りに落ちてしまうため、正直有り難かったし、深く考える余裕もなかった。