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潮騒
第4章 嫁 ー細波ー
井戸の側で洗濯をしていると、後ろにタエが立っていた。
「この暑い中よう精の出ること。」
誰もせんからや、好きでしてる訳やない。
菊乃は答えず、ザアッと盥の水を流し、たっぷりと水を含んだ着物を引っ張っては、洗濯板にゴシゴシと擦り付けた。
「タエさんも、手伝うてくれますか?はい、これ」
まだ濡らしただけの洗濯物の山を横に退けてタエの場所を作る。タエは大きく目を見開き、袖で口を覆う。
「私はえぇわ…そんなんしたことないし。」
ええの悪いのやない、手伝え!
「正一郎さん、大変でしょう?私あの人と縁がのうてよかったぁ」
この女…ケンカ売ってるのか。
「それに引き換え浩二郎さんは優しいからえぇわぁ…ほんまにお気の毒さま。」
小首を傾げ、憐れむように口の端で嗤う。
やっぱりケンカを売られてる。
そう判断した菊乃は。
スックと立ち上がった。
「この暑い中よう精の出ること。」
誰もせんからや、好きでしてる訳やない。
菊乃は答えず、ザアッと盥の水を流し、たっぷりと水を含んだ着物を引っ張っては、洗濯板にゴシゴシと擦り付けた。
「タエさんも、手伝うてくれますか?はい、これ」
まだ濡らしただけの洗濯物の山を横に退けてタエの場所を作る。タエは大きく目を見開き、袖で口を覆う。
「私はえぇわ…そんなんしたことないし。」
ええの悪いのやない、手伝え!
「正一郎さん、大変でしょう?私あの人と縁がのうてよかったぁ」
この女…ケンカ売ってるのか。
「それに引き換え浩二郎さんは優しいからえぇわぁ…ほんまにお気の毒さま。」
小首を傾げ、憐れむように口の端で嗤う。
やっぱりケンカを売られてる。
そう判断した菊乃は。
スックと立ち上がった。