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潮騒
第4章 嫁 ー細波ー
誰が好き好んであんな偏屈と添いたいもんか!夫を選べたなら、私だって浩二郎が良かったわ!という言葉が喉の下まで出掛かった。
だがそれではケンカにならない。売られたケンカは買ってやるのが生来負けず嫌いな菊乃の性分だった。
菊乃は小柄だが、タエもそれほど背は高くない。室内で並べば大して変わらない。ただ履いている下駄が綺麗で磨り減っていない分、古びて磨り減った下駄の菊乃よりも少しだけ目線が高かった。
菊乃は地面から三寸程高い水場のヘリに立ち上がり、その僅かな背の差を頼りに、顎を突き上げ、タエを見下ろす。
「生憎と、うちは男は甲斐性やと思うとりますんで。」
どちらも親掛りの実家暮らしではあるが、理髪店を営んでいる分だけ、正一郎の方が身入りはいいし、またヨシが何かと頼りにするのも正一郎だった。
遠回しに浩二郎を落とし、タエより優勢に立つ。
だがそれではケンカにならない。売られたケンカは買ってやるのが生来負けず嫌いな菊乃の性分だった。
菊乃は小柄だが、タエもそれほど背は高くない。室内で並べば大して変わらない。ただ履いている下駄が綺麗で磨り減っていない分、古びて磨り減った下駄の菊乃よりも少しだけ目線が高かった。
菊乃は地面から三寸程高い水場のヘリに立ち上がり、その僅かな背の差を頼りに、顎を突き上げ、タエを見下ろす。
「生憎と、うちは男は甲斐性やと思うとりますんで。」
どちらも親掛りの実家暮らしではあるが、理髪店を営んでいる分だけ、正一郎の方が身入りはいいし、またヨシが何かと頼りにするのも正一郎だった。
遠回しに浩二郎を落とし、タエより優勢に立つ。