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潮騒
第4章 嫁 ー細波ー
「嫌ンなったらいつでも帰って来たらえぇ。けど一週間はおらなあかんで?」
…一週間、経った。
帰ろう。
つい数日前に、百円貰って出来るだけ頑張ろうと思った事など、すっかり頭から抜けていた。それより現状の辛さの方が大きかった。いつか来るであろう拷問をただ待つなんてまっぴらや。
菊乃は乾いた洗濯物を畳み、夕食の支度をする前に、実家に帰る決心をした。
出て行きがけに、ふと貰った百円の事を思い出し、持って行っていいものか行李の前で悩んだ末、誰にも言うなと言われた金が後から見つかる方が面倒だ、と思い、懐に仕舞って家を出た。
実家の門扉を叩くと、母が出てきた。
「何や、菊乃。」
帰った娘に対する態度とも思えぬ冷たい声。母のトメは、開けた門の向こうで仁王立ちのまま、菊乃を招き入れる気配もない。
「帰って来た。」
「何しに。」
「何しにって。嫌ンなったらいつでも帰って来いってお父ちゃんが言うた!だから帰って来たんや!」
…一週間、経った。
帰ろう。
つい数日前に、百円貰って出来るだけ頑張ろうと思った事など、すっかり頭から抜けていた。それより現状の辛さの方が大きかった。いつか来るであろう拷問をただ待つなんてまっぴらや。
菊乃は乾いた洗濯物を畳み、夕食の支度をする前に、実家に帰る決心をした。
出て行きがけに、ふと貰った百円の事を思い出し、持って行っていいものか行李の前で悩んだ末、誰にも言うなと言われた金が後から見つかる方が面倒だ、と思い、懐に仕舞って家を出た。
実家の門扉を叩くと、母が出てきた。
「何や、菊乃。」
帰った娘に対する態度とも思えぬ冷たい声。母のトメは、開けた門の向こうで仁王立ちのまま、菊乃を招き入れる気配もない。
「帰って来た。」
「何しに。」
「何しにって。嫌ンなったらいつでも帰って来いってお父ちゃんが言うた!だから帰って来たんや!」