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潮騒
第2章 身代わりの花嫁 ー風波ー
生家が裕福で不自由なく育った為か、おっとりとした性格は大人になっても変わらず、この田舎にあっても始終のんびりとしている。
普段は洒落が利いて面白いが、いざ何か決め事をするとなるとどうにも頼りない。そんな父だった。
漁村であるから、村人の収入源は漁師として得た物だ。
他に家業で商売などをしていればまだしも、それもなく、漁師でもない。正確には、祖父の後を継いで漁師になろうとしたが、厳しい仕事についていけず、周りの足を引っ張るだけなので船を降りたらしい。
畑仕事はしているが、それらは自宅で食う為のものだ。だが、いくら自給自足を志しても、一銭も使わずに暮らしていくことは出来ない。
菊乃の家の収入は、母が村の人が作らない珍しい野菜などを率先して作ったり、より大きく、たくさん収穫できるように試行錯誤して出来た野菜を売った代金と、今は二人の兄がそれぞれ漁師と大工をして稼いでいる。父は、母の手伝いをしているに過ぎず、一家の長というにはやはり頼りなかった。
そして、子供がまだ学校に行っている頃は、やはり野菜の売上だけでは中々暮らしが成り立たず、自給自足のお陰で食うのに困るということはなかったが、祖父母の僅かな蓄えを喰い潰しても、五人の子を育てるのに借金は致し方ないことだったのだろう。
普段は洒落が利いて面白いが、いざ何か決め事をするとなるとどうにも頼りない。そんな父だった。
漁村であるから、村人の収入源は漁師として得た物だ。
他に家業で商売などをしていればまだしも、それもなく、漁師でもない。正確には、祖父の後を継いで漁師になろうとしたが、厳しい仕事についていけず、周りの足を引っ張るだけなので船を降りたらしい。
畑仕事はしているが、それらは自宅で食う為のものだ。だが、いくら自給自足を志しても、一銭も使わずに暮らしていくことは出来ない。
菊乃の家の収入は、母が村の人が作らない珍しい野菜などを率先して作ったり、より大きく、たくさん収穫できるように試行錯誤して出来た野菜を売った代金と、今は二人の兄がそれぞれ漁師と大工をして稼いでいる。父は、母の手伝いをしているに過ぎず、一家の長というにはやはり頼りなかった。
そして、子供がまだ学校に行っている頃は、やはり野菜の売上だけでは中々暮らしが成り立たず、自給自足のお陰で食うのに困るということはなかったが、祖父母の僅かな蓄えを喰い潰しても、五人の子を育てるのに借金は致し方ないことだったのだろう。