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潮騒
第9章 正一郎 不在の夏 ー大時化ー
「何が無理か!お産は病と違うのや、動けるうちは働くのが当然、海くらい潜って鮑のひとつも獲ってきたらどうや?」
あんたは鬼か!
…チヨが姑に同じこと言われたら人でなしやのなんやのと大袈裟にふれ回る癖して…瞬時に怒りがこみ上げた。
冷静に考えれば、産月に入ってから潜って水中で身体を冷やすなど以ての外。
腹に無理のかからぬよう、ゆるゆると働け、というのが経験者というものだろう。
だがこの時は、ヨシも鬱憤が溜まっていたのか、嫌味が止まず。
いつもなら右から左に聞き流し、のらりくらりとやり過ごす菊乃も、堪忍袋の尾が切れた。
菊乃は「よっこいしょ」と手をついて立ち上がった。
「解りました。行ってきます。」
キッとヨシを睨みつけ、菊乃は海に潜る支度をした。
あんたは鬼か!
…チヨが姑に同じこと言われたら人でなしやのなんやのと大袈裟にふれ回る癖して…瞬時に怒りがこみ上げた。
冷静に考えれば、産月に入ってから潜って水中で身体を冷やすなど以ての外。
腹に無理のかからぬよう、ゆるゆると働け、というのが経験者というものだろう。
だがこの時は、ヨシも鬱憤が溜まっていたのか、嫌味が止まず。
いつもなら右から左に聞き流し、のらりくらりとやり過ごす菊乃も、堪忍袋の尾が切れた。
菊乃は「よっこいしょ」と手をついて立ち上がった。
「解りました。行ってきます。」
キッとヨシを睨みつけ、菊乃は海に潜る支度をした。