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潮騒
第9章 正一郎 不在の夏 ー大時化ー

「そうは問屋が卸さんで…」
ポツリと呟く。
ここで獲物に執心して、命を落としたら唯の犬死や。
私は、生きる為に稼ぐんやから。
人目のあるところで、皆に止められながらでも、お産は病と違うて、姑にキツう言われたら従うしかあらへんのや、と皆の同情を引くくらいしてもええやろ。
鬼姑と呼ばせたるからな!
浜に降りると、菊乃の姿を見た者は皆一様に目を見開く。
「お前…気は確かか?」
「何しにそんな格好しとんのや」
浜辺で流木を焚き、暖を取る男衆が居た。
ひと潜りし冷えた身体を温めるのだ。
「お義母さんに、お産は病と違う、休む暇あったら鮑のひとつも獲って来いて言われて…」
その言葉に声を掛けてきた男は、握り飯を頬張ったまま呆れた顔をする。
「なんとまぁ…」
「自分の娘がそないなこと言われたら村中にふれ回る癖にの!」
二人目を見合わせ、口の中の飯を嚥下した。
ポツリと呟く。
ここで獲物に執心して、命を落としたら唯の犬死や。
私は、生きる為に稼ぐんやから。
人目のあるところで、皆に止められながらでも、お産は病と違うて、姑にキツう言われたら従うしかあらへんのや、と皆の同情を引くくらいしてもええやろ。
鬼姑と呼ばせたるからな!
浜に降りると、菊乃の姿を見た者は皆一様に目を見開く。
「お前…気は確かか?」
「何しにそんな格好しとんのや」
浜辺で流木を焚き、暖を取る男衆が居た。
ひと潜りし冷えた身体を温めるのだ。
「お義母さんに、お産は病と違う、休む暇あったら鮑のひとつも獲って来いて言われて…」
その言葉に声を掛けてきた男は、握り飯を頬張ったまま呆れた顔をする。
「なんとまぁ…」
「自分の娘がそないなこと言われたら村中にふれ回る癖にの!」
二人目を見合わせ、口の中の飯を嚥下した。

