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潮騒
第9章 正一郎 不在の夏 ー大時化ー
肩ほどの深さに入ったところで、水中に潜った。
足ひれを捌き、海中を進む。
常であれば、魚のようにしなやかに。
身体を波打たせ、水に溶け込むことができた。
だが今の身体ではそうはいかず、泳ぐ姿は不恰好だった。
腹の抵抗が大きく、泳ぎにくかったが、全く進まないわけではなかった。
岩場に目を凝らし、岩に擬態する鮑を懸命に探す。
目星をつけて一度息継ぎし、潜ろうとした所で、想定外のことが起きた。
頭を下に向けて海中に潜ろうと、足で水を蹴っても身体が沈まない。
いつもなら錘などなくとも、スゥッと吸い込まれるように水中に溶け込めるのに、腹の抵抗が大きすぎた。
えぇい!と思い切り足を蹴ったら、くるりと反転、腹を上に向けて水上に浮かび上がってしまった。
まるで浮袋でも抱いているようで、どうやっても獲物のある水底の岩には届かなかった。
誤算だった…
真逆潜れすらしないとは。
錘を足したところで、無理だろうな…
しばし水中で考え、諦めて浜に上がる。
濡れた身体に、風がやけに冷たく感じた。
ぶるっと身体をを震わせ、暖を取る男衆の元で火に当たらせて貰おうと一歩踏み出した所で、刺し込むような腹痛を感じ、菊乃は踞った。
足ひれを捌き、海中を進む。
常であれば、魚のようにしなやかに。
身体を波打たせ、水に溶け込むことができた。
だが今の身体ではそうはいかず、泳ぐ姿は不恰好だった。
腹の抵抗が大きく、泳ぎにくかったが、全く進まないわけではなかった。
岩場に目を凝らし、岩に擬態する鮑を懸命に探す。
目星をつけて一度息継ぎし、潜ろうとした所で、想定外のことが起きた。
頭を下に向けて海中に潜ろうと、足で水を蹴っても身体が沈まない。
いつもなら錘などなくとも、スゥッと吸い込まれるように水中に溶け込めるのに、腹の抵抗が大きすぎた。
えぇい!と思い切り足を蹴ったら、くるりと反転、腹を上に向けて水上に浮かび上がってしまった。
まるで浮袋でも抱いているようで、どうやっても獲物のある水底の岩には届かなかった。
誤算だった…
真逆潜れすらしないとは。
錘を足したところで、無理だろうな…
しばし水中で考え、諦めて浜に上がる。
濡れた身体に、風がやけに冷たく感じた。
ぶるっと身体をを震わせ、暖を取る男衆の元で火に当たらせて貰おうと一歩踏み出した所で、刺し込むような腹痛を感じ、菊乃は踞った。